主に中学生を対象とした塾について、考えてみたいと思います。
まず、皆さんがお子さんを塾に通わせる場合、塾に何を求めるでしょうか。
殆どの方は『成績向上』をトップにあげるのではないでしょうか。
定期テストの点数をあげる事、欲を言えば提出物の管理や内申点UPのための指導など、高校入試を見据えた成績向上を求めるでしょう。
そうですよね、決して安くないお金を支払うのですから。
成績をあげるためには、定期テストの点数をあげればいいんです。
(授業態度や提出物も関係しますが)
それが簡単にいかないから塾に通わせるんでしょ(怒)
という心の声が聞こえそうですが、定期テストの点数をあげるのは実はとても簡単なんです。
テストで良い点数をとる一番確実で、手っ取り早い方法は何かと言うと、
『テスト問題を手に入れて、事前に答えを覚えて本番に臨むこと』
これです。
これが一番確実です。
職員室に忍び込んで先生の机の中からテスト問題を探し、スマホで撮ってくればいいんです。
そしてテスト当日までに解かせて(誰かに解いてもらって)覚えさせてテストに臨めば、多少忘れたとしても高得点がとれるはずです。
ただ、普通の人はやりません。
不法侵入は犯罪ですし、学校にばれた時のリスクを考えるとまずやる人はいないでしょう。
では犯罪ではなく、学校に悪く評価されるリスクもないとなったら、我が子の為にそのテスト問題を手に入れて、それを覚えさせて良い点をとらせたいと思いませんか?
そんなことをしても学力はつきませんが、良い点数はとれます。
そんな卑怯な事をしてまで良い点数をとっても意味がない、ろくな人間に育たない、バカバカしいと言える人はどれほどいるでしょう。
そう、塾の定期テスト対策という商品を購入すればいいのです。
短期間で成績向上を求められる塾は成績を上げる為にあらゆる努力をします。
その一つが、定期テストの問題を集めてとっておくこと。
誰々先生が、どこどこ中学校の何年生の何学期に出したテスト問題。
そこまで細かくおさえて置いて、過去問としてテスト対策に使います。
同じ教科書であれば重要なポイントは決まっています。
違う先生が作っても同じようなところが出題されますので、それが同じ先生になると・・・それは似てきますよね。
技術系の教科に至っては、ほとんど同じ問題を出す先生もいるくらいです。
テスト前に、試験範囲の過去問を見繕って何度も何度も解かせる。
それだけで点数が低い子は簡単に20点、30点はあがります。
さらに塾向けの教材には、それぞれの教科書の定期テスト予想問題というものがありますので、それも合わせて繰り返しやらせて暗記させれば、お母さんも本人も大喜びの点数をとってきます。
簡単なんですよ。
だから未経験の大学生を募集して、安い人件費で働かせてもまわるんです。
やっているのは教育ではなく、飴を見せてお尻を叩く調教ですから。
そうすると子どもたちは、
「●●塾の予想問題は良く当たる。」
「△△塾の使っている塾教材から同じ問題がよくでる。」
なんてことを学校で話し合って、塾を移ったり、同じ教材を求めたりします。
普通の親なら薄々は気がついているでしょう。
テスト問題を暗記してテストに臨むという、カンニングのような勉強で学力があがるわけがないと。
普段の学校の授業をよく聞き、テスト範囲内の重要事項を見つけ、時間をかけて咀嚼し、テストでどのように問われるか、予想して対策を立てる。
これらは、全て子ども自身が試行錯誤しながらやるべきことだと。
自分自身でやるから自分の力になるのだと。
それを全部塾がやってしまうんです。
子どもは楽に点をとれる勉強方法しか受け付けなくなります。
地力をあげるための、頭を使うような学習や無駄が多く見える学習を拒否するようになります。
「それ、テストに出るの?」
テストに直結する学習しかやらなくなるのです。
塾の先生に言われた通りに暗記して、点をとってくるだけなのです。
良い点数がとれても学力が落ちていく、危険なスパイラルが出来あがるのです。
成績を上げるためには、定期テストの点数をあげることと、提出物を期日通りに提出することが必要です。
大体成績が悪い子は、この提出物がいい加減だったりします。
たまに、あまりにもくだらない課題に反発してまともに提出しない「出来る子」もおりますが・・・。
折角テストの点数をあげても成績が上がらないと、スポンサー(親)は満足しません。
すると、課題の進捗状況や提出期限と実際の提出まで、塾に求めだします。
すでにそういう親子は、まともなコミュニケーションが成立せずに勉強の話になると親子バトルになるか、もう力関係が逆転して、キレて暴れる子どもにお手上げの親という関係になっていることが多いのです。
子どもは塾が管理してくれるので、何をどこまで、いつまでにやるか考えなくてよくなります。
お察しの通りここでも、課題の量と提出日から逆算して取組計画を立てる、計画的に課題を仕上げる、そうした社会に出てから必要となる技術を身につける機会が塾に奪われてしまいます。
こうして塾に通いだすと、テストの点数はあげてもらえますが、社会に出てから必要とされる本来の学力は加速度的に低下していきます。
私が企業の人事管理職として出会った、多くの高学歴の指示待ち人間はこのようにしてできあがるものなのだと、教育業界に身を置いてみて腑に落ちました。