二種類の忍耐力

どんぐり倶楽部では、忍耐力には二種類あるとしています。

 

A:黙々と何も考えずにあるいは条件反射的に反応して単純作業を繰り返すことを可能にする忍耐力

B:様々な考えを継続して展開するために思考し続ける忍耐力

 

この忍耐力を集中力と置き換えて読んでも構いません。

 

「うちの子ゲームだったら何時間でも集中力が続くんだけど。」というお母さんがいますが、Aですね。魂を奪われたかような表情で、憑りつかれたようにゲームをしている姿を「集中している」と言える感覚がわかりませんが、集中しているとしましょう。

 

 

Aの忍耐力は、以下のような状況で必要とされます。

 

工場のライン作業

データ入力

商品の棚卸し 等

 

これらの作業は、単調でありながら一定の精度を求められるため、集中力を保つことが求められます。しかし、これらの作業は知的な刺激が少なく、クリエイティブな思考を必要としないため、精神的に退屈でストレスがたまりやすいです。このため、単純作業を繰り返すための忍耐力は、ある意味で「機械的な忍耐力」とも言えます。

 

Bの忍耐力は、以下のような状況で必要とされます。

 

科学的な研究

創造的な生産活動

戦略的な計画立案 等

 

これらの活動は、高度な集中力と持続的な精神的エネルギーを必要とします。複雑な問題を解決するためには、多角的な視点から考え、創造的なアイデアを生み出し、それを実行に移すことが求められます。このため、複雑な思考を継続するための忍耐力は「知的な忍耐力」とも言えます。

 

幼児・児童期に付けるべき忍耐力はどちらでしょうか。

 

当然のことですが、幼児・児童期において重要なのは、Bの忍耐力を育成することです。子どもたちが自分の人生を楽しむには、自分の頭で考え、判断し、決断することが必要です。創造的で論理的な思考を継続することが出来るように育てる必要があります。

 

 

学校準拠の簡単な算数の文章問題を、見た瞬間に「わかんない。」「これ、なに算?」と言うように育ててはいけないのです。

 

この時期には、Aの忍耐力を強化する刺激は出来るだけ避けなければなりません。

 

計算ドリル、計算プリントの徹底反復、漢字をひたすら書かせる、自学ノートをただ埋めるだけの宿題など、まさにAの忍耐力を強化する刺激です。

 

単純作業に多くの時間を費やすと、単純で反射的な思考回路が強化され、複雑な思考回路が育ちません。脳の発達段階においては、多く使う思考回路は強化され、あまり使わない思考回路は消えていきます。これが最近研究が進んできた「神経回路(シナプス)の刈り込み」です。

 

 

また、子どもたちは新しいことを学ぶことに興味を持ち、好奇心を持つべきです。単純作業はその興味と好奇心を低下させます。

 

単純作業ばかりを経験すると、将来的に創造的な問題解決や高度な思考を必要とする場面で苦労することになります。